1 研究枠組と理論仮説の提出 本研究の目的は、学校音楽カリキュラムを、実際に当事者である学校成員の視点から「経験された」レベルで解明することである。すなわち、学校音楽カリキュラムを、紙の上の真空の状態でなく、「生きた姿」で、「生きられた」学校音楽カリキュラムを解明しようとするものである。本研究は、それを(1)潜在的カリキュラム研究として、(2)カリキュラム社会学を援用して、研究枠組を構想する。具体的には、当事者のカリキュラム経験を解明するという課題をたてて、潜在的カリキュラムの単発的な抽出にとどまらない、顕在的カリキュラムとの関連でその生成基盤と過程を読み解く研究枠組を構想してみた。より具体的には、本研究では、教師のカリキュラム経験を「カリキュラムの組織過程」として、学習者のカリキュラム経験を「カリキュラムの適応過程」として、「教育過程」全体の中で、それぞれ別個の視角から当事者のカリキュラムの意味の再規定を解明しようとする。 2 伝達された学校音楽カリキュラムの解明 「1」の研究枠組から、カリキュラムを展開する当事者である教師のカリキュラムの意味付与の解釈枠、意味を規定する文脈を解明するため、教師(現職教員・退職教員)への聞き取り調査を行った。教師の「語り」から教師にとって学校音楽カリキュラムがどのようにたちあらわれ、どのように意味づけされるかを解明しようとした。教師が学校音楽カリキュラムを意味付与する文脈として、(1)カリキュラムに関する役割、(2)カリキュラム・アイデンティティ、(3)生徒との相互作用、(4)同僚教師、教科集団との社会的関係性の4つを抽出した。
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