研究概要 |
申請時の計画では,第1年次に,(1)収集すべき資料リストの作成と一部入手,(2)歴史の読解力概念の明確化と育成・評価のための理論モデルの構築,(3)外国調査に向けた企画と折衝の3点を挙げた。このうち,(1)についてはほぼ予定通り行い,一部資料を入手し分析することができた。(2)についても,(1)の分析を踏まえ英国の歴史学習論を手がかりに一定の理論仮説の構築を行った。その成果の一端は,全国学会誌に掲載することができた。 そこでは,歴史の読解力を「歴史解釈」ととらえ,歴史解釈を促す学習論として,英国のマカレヴィとバナムの研究に着目した。それぞれが開発した教科書や学習計画の分析を行った結果,生徒の解釈を促す歴史学習の条件として,(ア)主題の探究を促す問いと教材,(イ)解釈を間主観的に吟味する議論,(ウ)証拠に基づく議論を鍛える「書く」技能,の重要性が明らかになった。今後は,他の学習論を検討し,理論仮説の精緻化を図りたい。 また,(3)については英国のP&H社との折衝が予想外に順調に進み,年度末に英国を訪問することができた。まずケンブリッジとノーリッジの中等教育学校で「歴史科」と「市民科」の授業を見学した他,教師や生徒とも歴史の教科書活用や授業のあり方等について意見交換した。また,ロンドンでは歴史のスーパーティーチャーと認められるD.ウィルキンスン氏の講義を聴き,上記論文で明らかにした三つの条件の意義を確認することができた。 今年度は米国の訪問調査に道筋を付けるとともに,文献資料の収集・分析を継続し,昨年度はできなかった評価モデルの構築についても研究を進める予定である。
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