研究概要 |
21年度は,昨年度の英国への調査研究旅行に引き続き,米国での調査研究を第一の目標に設定し,まず調査対象の抽出と訪問に係る折衝を心がけた。 その結果,9月にバージニア州フォールズチャーチ市の公立高校とメリーランド州のタウソン大学の社会科教育研究室,さらにワシントン州ムシアトル市とベルビュー市の公立中学校と私立高校を訪問し,歴央や総合学習の授業参観や歴史教師との懇談を行い,多数の資料と情報を収集することができた。 帰国後,収集した情報や文献を精査することにより,歴史の読解力を育成する条件として,次の点が明らかになった。 (1)文書資料やテキスト等を正確に読むこと,(2)自ら解釈したり議論した内容を的確に書くこと,(3)ハンズオン(作業的体験,インタラクティブな体験)の重要性,の3点である。これは,昨年度の英国調査から引き出された条件にも相通ずるものがあり,読解力の育成に向けた歴史カリキュラムの開発に向けて大きな成果となった。 これら米國調査と並行して,米英両国の歴史教科書や教材キット等の購入と分析,日本の優れた歴史教育実践の分析と考察を行った。特に,兵庫県立明石北高校の三原慎吾氏による史料読解に重点化した日本史Bの授業を観察し,生徒のワークシートを入手できたことも,読解力の育成と評価モデルの構築の点で意義あることであった。 来年度は,これを踏まえてまずは評価モデルの構築を行うとともに,3年間の研究成果を何らかの中等歴史カリキュラムの形にまとめ上げ,学会誌等に投稿するとともに,報告書を刊行して世に問いたい。
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