研究概要 |
今年度は5カ年にわたる本研究の初年度であり,極力,戦後日本の理科カリキュラムに関係する文献資料の収集に努めた。その一方で,収集した文献資料を分析検討し,戦後の理科カリキュラムデザインに関する研究を進める目的で,次のような研究を実施した。 1.昭和22年版学習指導要領理科編の第1〜3学年の内容構成を分析し,同学習指導要領理科編が作成過程において,GHQ/CIE係官からもたらされた米国ワシントン州コース・オブ・スタディの影響を受けていたことを明らかにした。従来の先行研究では,同学習指導要領理科編は戦前の『自然の観察』(1941・42)の内容を踏襲して作成されたと指摘されていたが,今回新たな知見が得られた。 2.文部省は昭和22年版学習指導要領理科編を作成した直後から,同学習指導要領理科編の改訂作業に着手するが,その過程において,東京第一師範学校男子部附属小学校や東京都教育委員会などによって作成された理科カリキュラムが昭和27年版学習指導要領理科編の成立に及ぼした影響について論究した。 3.現行の検定教科書のモデルとして,昭和24年に発行された第5・6学年用理科教科書である『小学生の科学』の成立過程について論究した。教科書原案は理科研究地区委員会によって作成され,その後,理科研究中央委員会によって採択され,修正されたが,原案の作成・修正段階において米国科学教科書が影響を及ぼしていた。
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