研究概要 |
今年度は5ヵ年間にわたる研究期間の第3年次であり,戦後日本の理科カリキュラムデザインに関する文献資料の収集に努める一方,収集した文献資料の分析・検討を行った。戦後の理科カリキュラムの成立と展開,及び理科カリキュラムデザインの日本的特徴を明確にする目的で研究を実施したところ,次のような点が明らかになった。 現行の検定教科書のモデルである第5・6学年用『小学生の科学』(1949)の原案は理科研究中央委員会によって採否が決定され,中央委員会及びGHQ/SCAP/CIEによって修正が行われていた。採択された19単元のうち,17単元が全国9地区に設置された理科研究地方委員会の1つである九州地区委員会によって作成されていた。理科研究中央委員会は『小学生の科学』の原案採択に当たって,次のような基準を設けていた。(1)児童が行う実験数が多いこと,(2)学習に適した種類の動植物を取り上げること,(3)児童にとって理解困難と思われる内容を削除すること,(4)暫定教科書(1946)と同一の内容を削除すること,(5)B.M.パーカー(Parker,Bertha Morris)著『基礎科学教育叢書(The Basic Science Education Series)』を参考にすること,等々。理科研究中央委員会と地方委員会による共同での教科書づくりは,学校現場の声を教科書内容に反映させる地方分権的,民主的システムであり,他の教科には見られない理科独自のやり方であった。
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