平成21年度は3年次にわたる本研究の2年目であり、研究の方向性において一つの転換点となった。 実施した研究内容は次の2つである。 1) 前年度までの作業で収集した歴史叙述図書(通史全集等)、事典、統計資料集、写真集、DVD、博物館展示物写真、歴史史料集、古地図などを対象に、教師側が授業構成を行う際の情報処理過程のモデル化を試み、一方でこれらの情報に対する学習者側の活動として「討論活動」を軸に構成する方略の開発を試みた。 (なお当初、取扱う題材を絞り込んで内包している情報をデータベース化することを想定し、そのための謝金も計上していたが、初めから教材構成と学習活動を想定して情報収集にあたる方がより実際的で研究的意義が高いと判断し、大学院生5名の演習の一環として史料の教材構成過程、学習活動構成過程の検討を通して行った。このため、謝金が不要となった。) 2) 「歴史史料」を対象とする場合と「歴史に関して述べられている諸言説」を対象とする場合のそれぞれの学習活動を含み入れた指導法に関し、日本の近年の「活動」的な歴史学習の実践動向や、最近の英国歴史教科書にみる歴史学習活動の動向をもとに、その学習活動構成類型を析出した。特に構成主義的歴史学習による学習活動の開発が盛んな英国の歴史学習事例は参考になり、一般論として「活動」的な歴史学習の学習活動に不可欠な要素が原因・因果連関追究、等質性・差異性の追究、史的意味の追究の3側面にあることが、方法的「原理」の一端として確認できたことは、研究の今後の進展に向けて重要な成果であった。
|