小学校4年から6年までの各学年男女2名、計12名の児童を抽出し、歌声ならびに話声について、デジタルビデオカメラにより音声標本の採取を行い、データの蓄積を行った。音声標本は、(1)/ア/音による音域調査(2)開口母音/ア/と閉口母音/イ/を用いたC4〜C5、G4〜G5の上行ポルタメント(3)G4・C5・G5の5母音(4)C4〜E5の音域を含む旋律を採取した。更に、音声標本採取時に、身体的変化や声の変化に対する認知について、被検者自身に聞き取り調査を行うと共に、被検者の歌唱指導を継続的に行っている教諭2名に、被検者の声についての認知および変声後の声種の予測に関する調査を行いデータベース化を行った。 Arcadiaの「AcuosticCore8」を用いて、音声標本の分析を行った結果、変声期における音声の変容は、ポルタメント(C4-C5音/ア/・/イ/)標本の「基本周波数解析」が有効であり、変声期における音声が変容する過程は、ポルタメント歌唱時に基本周波数演滑らかに上下に推移するのではなく、急激な跳躍を行う特徴を見出した。これは、変声期には基本周波数の急激な変容時点が存在する可能性を示している。 この結果を踏まえ、変声期における効果的な発声指導法として、ポルタメントを用いた指導法を検討すると共に、音響解析結果を提示し、好ましい発声の方向性を具体的に示す指導についての検討を行った。
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