平成20年度に引き続き、小学校5年生から中学校1年生までの各学年男女2名、計12名の児童ならびに生徒の歌声および話声について、デジタルビデオカメラにより音声標本の採取を行い、データの蓄積を行った。音声標本は、(1)開口母音/ア/と閉口母音/イ/を用いたC4~C5、G4~G5の上行ポルタメント(2)G4・C5・G5の5母音(3)宮崎駿作詞/久石譲作曲「君をのせて」の歌唱(4)身体の変化や声の変化に関する認知についての被験者による自己申告話声の4項目を採取した。 (株)NTTアドバンステクノロジの「音声工房Pro」を用いたポルタメント(C4-C5音/ア/)音声標本の解析結果から、従来、その変化を判別し難いとされてきた女子においても、変声期における音声が変容する過程において、ポルタメント歌唱時に基本周波数の急激な変容時点が存在する可能性があり、変声が進むにつれ滑らかに上下する傾向にあること、また、児童の音色から女声の音色への移行期においては、第4倍音以上の倍音群に変化が存在する可能性があることを見出した。 変声期を迎えた児童・生徒が、地声とファルセットを組み合わせる発声法の修得により、無理のない歌唱が行える可能性について、被験者にリアルタイムで音声解析結果を提示し、声の変化を聴覚と視覚の両面から理解できる発声指導法について研究を継続している。
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