本研究は、生活主義の原理に基づいて展開された、音楽科授業構成のあり方を明らかにすることを目的としている。すなわち、子どもの創造性開発を目指して、子どもの各発達段階における音楽表現欲求に即しながら、主体的な学習活動を組織し、それらが、生活における音楽の楽しみを味わう力の形成へとつながっていく授業構成のあり方を明らかにすることである。 本年度は、3カ年計画の2年目にあたる。前年度までに収集した、1)音楽教科書や指導書、2)州教育局などによって提案された指導計画・授業計画、3)各大学附属実験学校による授業実践報告、などの翻訳・分析を進めた。また、研究計画に従い、アメリカ合衆国中部地区における音楽教育実践資料の収集・整理・分析を行った。国内の大学において調査を行い、国内において入手不可能な資料収集のために、アメリカ合衆国の音楽教育学者の協力を仰ぎながら、海外出張を計画・実行した。さらに、収集した資料の整理・分析を行い、創造性開発という目的のもとで様々に実践された音楽授業のあり方を歴史的・類型的に概観した。 創造性開発を目指す音楽学習活動は、1)一連の総合的な学習活動から派生的に生じるもの、2)音楽学習の時間になされるもの、の二つに分類される。また、それらの特質に応じて「創造性」の概念が定義され、その開発のための授業が構成されるため、多種・多様なものが展開されている。それらは、大きくは、次の二つの視点から検討・分析できる。つまり、1)子どもの生活や人間形成における音楽の意義から導出される内容と方法、2)音楽性育成の視点から組織される内容と方法、である。現在は、新たに入手した資料の翻訳・分析を進めながら、音楽科授業の類型化を進めている。 今後は、さらに資料を充実させるために、アメリカ合衆国西部地区の基幹大学において研究調査を行い、実践資料等を収集し、分析・検討をする予定である。
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