平成20年度は以下の事項に関して研究を進めた。 1.音楽科評価に関する現状の問題点の分析 音楽科学習評価にかかわって、現在学校で問題となっている事柄を、音楽教育学会の大会(2004/2005)で行われたプロジェクト研究「新しい学習評価と音楽科の学力」の報告に基づいて整理し、質的評価の視点から考察を加えた。 4つの評価観点への疑問、評価規準作成上の問題点、評価作業における実際上の困難点が明らかにされ、今後「かかわりとしての評価」の側面からの研究の必要が提案された。論文「音楽科学習評価にかかわる問題点-音楽教育学会プロジェクト研究2004/2005報告から-」(丸山忠璋)は2009年度研究成果報告書に掲載の予定。 2.音楽授業と精神分析臨床の共通点からの考察 音楽授業において観察される相互関係的な意味解釈の側面は、精神分析臨床における間主観的アプローチと同様の性質が見出される。P.バースキーとP.バグランドの著書『間主観的アプローチ入門意味了解の共同作業』(丸田俊彦・監訳、岩崎学術出版社、2004)に依拠しつつ、「音楽授業における評価は、間主観的・相互的コンテクストのなかで形成される1人1人の意味づけの体験に対しても注意を払わなくてはならない」と結論づける。論文「“意味了解の共同作業"としての音楽授業音楽科学習評価の質的転換をめざして-」(丸山忠璋)は、『武蔵野音楽大学研究紀要第40号』(2008年3月、79-87頁)に掲載されている。
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