初任期の小学校教師が反省的実践家として、力量形成していく過程を国語科の授業分析を通して事例的に研究していくことを研究の目的としている。そのために、教師の授業スタイルの変容に着目して、次の二つの視点から捉えようと試みた。第一は、インタビューや実践記録などをもとにして、教師の《ライフヒストリー》から、巨視的に捉える視点である。第二は、教師の《カリキュラム経験》から、微視的に捉える視点である。 平成22年度の研究実施計画では、次の3段階の研究を予定していた。 (1) 文献による先行研究と分析枠組みの確認 (2) 実践のデータ収集と分析:小学校での教職経験3年未満の教師、6年目から8年目の教師を対象に、初任期に入ったばかりの教師と、初任期を脱しようとしている教師の事例の収集 (3) 分析とまとめ これらに基づいて、本年度は、以下のような成果をあげることができた。 1) 教師の初任期の1-3年目においては、まず教師の授業ルーティン(発問の仕方、指名の仕方など)を確立し、こどもとの関係づくり、保護者との関係づくり、教師との同僚性を機会あるごとに深めていくことが最重要であること。 2) 教師の初任期から中堅期への移行期である6-8年目においては、学校での様々な校務分掌において中核的な働きを求められるようになる。その中で、同僚性を深め、研究的な観点を深めていく中で、学校全体の中での自分の動き方や位置づけが明確になってくること。 3) さらに、移行期である6-8年目においては、これまでの自分の授業観、学習者観、学習観を変化させていく契機を授業の中で見つけ、様々なメンターにアドバイスされる中で、授業を変えていくことができること。
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