「世界名作劇場」(1968年〜1996年)放映の28作品から、ハウス食品が提供した「ハウス食品世界名作劇場」(1985年〜1993年)放映の9番組のうち、「小公女セーラ」「ピーターパンの冒険」について、市販DVD、原作書籍、翻訳書籍、研究書、参考文献をほぼ収集し、絵コンテの製作も整った。 両作品を最初に取り上げたのは、「小公女セーラ」が第一作目であることと、視聴率の低迷を受けて、時代に受ける物語として選択されたからである。いじめが大きな話題となった時代が、意識的に再話された物語に反映されていることをあきらかにした。また、「ピーターパンの冒険」は、28編中で男の子を主人公とする数少ない作品であるが、女の子の視聴者に向けて、どのように再話されたのかを明らかにした。 平成20年度は、松山雅子が「ピーターパンの冒険」を、畠山兆子が「小公女セーラ」を担当して、オープニングの映像表現を考察した。その結果、「小公女セーラ」のオープニングは原作に近いセーラ像を象徴的映像で描くことで物語を暗示していることが明らかにできた。全話の物語構成は、結末において原作にはない和解が描かれ、再話による物語の変容が起こっていた。結末を好意的に受け入れる視聴者の雑誌投書が、アニメーション番組の影響の大きさを示していた。 「ピーターパンの冒険」では、主人公がウエンディに変えられており、再話物語は大きく変容していた。古典名作の原作との比較研究は、アニメーション化による物語の変容が大きな影響力を持つだけに重要である。それらの研究成果を日本児童文学学会発表と研究論文に執筆した。
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