研究概要 |
本研究の対象である「世界名作劇場」は、児童文学の古典的作品をとりあげ、アニメーション番組として放映した人気番組である。取り上げられた作品は、「読んだ物語」ではなく「見た物語」として、視聴者の記憶に残っている。それら再話された物語は、必然的に放送形態に規定された構造を持つ。1回放映の物語(小さな物語)においても、1年間の物語(大きな物語)においても、とくに時間の規制は物語の構成に大きな影響を与えている。本研究は、「見る物語」として再話され変容した物語構造と特定の画像の繰り返し使用等の表現方法の効果を明らかにすることを目的としてきた。 具体的には、平成18年度~平成19年度の基盤研究(C)、「世界名作再話にみられる物語の放送形態に関する構造分析的研究」を発展させ、世界名作劇場「小公女セーラ」と「ピーターパンの冒険」の映像表現の特色を明らかにした。「小公女セーラ」では、2009年10月から12,月にかけて10回、実写版テレビ番組「小公女セイラ」が放映されたのをうけ、アニメーション番組がどのように反映しているかを明らかにした。また、入手できたフランス語輸出版の「小公女セーラ」DVDを使って、フランス語版独自のオープニングの映像と音楽、歌詞の分析を、日本語版と比較する形で行った。これらの結果は、研究成果として紀要にまとめた。 同様に、「フランダースの犬」「あらいぐまラスカル」「ペリーヌ物語」「トムソーヤの冒険」の資料収集がおわり、作品分析が現在進行中である。日本アニメーションとの画像使用交渉を待って、『アニメーションによる「世界名作劇場」の再話研究(仮称)』の出版を、来年度中に予定している。
|