本研究は、(1)現代の<読書指導>の可能性と課題を明らかにする、(2)テレビというメディアによる物語典型の解明、(3)国際理解への窓口としての日本製アニメーション番組の再話、(4)社会文化史的アプローチによる物語の放送形態の必然性の解明を、研究目的として行ってきた。番組の放送形態、物語形態、社会文化史的背景については、これまでも研究成果を発表してきた。2010年度はそれらを踏まえて、1985年放映のアニメーション番組「小公女セーラ」の海外への広がりとして、フランス放映版のオープニングを手がかりに、フランスにおける物語受容の一端を明らかにしようと試みた。また、2009年放映の「小公女セイラ」は実写番組であったが、アニメーション番組の影響下にあり、社会文化史的背景に着目し、物語の今日的意味を考えた研究成果を発表した。2011年度には、継続研究の発表と、新たに「ピーターパン」物語の研究成果の発表を予定している。 作品とアニメーション番組に対する研究は成果を挙げてきたが、視聴者の作品理解、子どもの物語享受のあり方の研究は、数量的アンケートにとどまり、内容については模索状態であった。この領域に着手すべく、原作物語とアニメーション番組を使用した授業を行い、その後大学生(200名)と小学生(1クラス)に、書き込みによるアンケート調査を実施した。この調査の分析結果は、科研報告書で行う予定にしている。この予備調査を元に、2011年度には日本の子どもの物語享受のあり方の本調査を、小学生、中学生、高校生、大学生に行う予定にしている。さらに、海外の小学校において同様の調査を実施し、日本と海外の比較をおこない、日本製アニメーション番組の再話表現の享受状況を明らかにしたいと考えている。そのため、研究成果の出版は、予定を大幅に遅れることになった。
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