本年度は、学級経営文化に関する国際調査と国内調査を実施した。 ○国際調査について モスクワ市を問し、ロシア連邦教育アカデミー及びロシア連邦教育省、モスクワ市教育評価センター等の諸機関を訪問し、関係者にインタビューを行うとともに資料を収集した。その結果、ロシアにおいて「教育に関する国家優先計画」のもとで、大規模な教育改革が進行中であることが判明した。本研究テーマに関してすでに実施されていることとしては、学級担任が人格形成(訓育)の上で重要な職務として位置づけられ、その待遇改善が図られていることが明らかになるとともに、児童生徒の自主的・自治的な活動が学校の教育活動全体の中で体系化され、学級担任の職務もその中で位置づけられていることも判明した。 さらに、教育課程の国家基準の改定が準備され、今日公表されている案によれば、教科の授業時間以外に、児童生徒の活動の時間が大きな枠として設けられる方針が示されていることが明らかになった。 知識基盤社会に対応する教育改革として、ロシアにおいては、従来の教科カリキュラム一辺倒のカリキュラム観が大きく変わりつつあることがうかがえる。 ○国内調査について わが国の動向としては、同じく、知識基盤社会に対応する教育改革を目指しているが、教科教育の充実という意識が強く、特別活動など児童生徒の自主的、自治的な活動を通してその自律性、社会性を育成する意識が弱まっている状況を明らかにした。 同時に、戦後の学級担任配置状況の調査を試みたが、十分満足すべき結果は得られなかった。史料等の保存・公開の体制が未整備であることを痛感した。
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