本年度は、ロシアの学級経営文化に関する研究のとりまとめと日本の学級経営文化に関する補充調査を実施した。 第一年次と第二年次に収集した資料や現地調査結果をとりまとめ、日本特別活動学会第19回大会(名古屋学院大学)で「ロシアの学校における『学級の時間』について」を発表した。その中で、学級担任の職務の変遷の全体像を明らかにした。すなわち、初期における「行動の監視と秩序維持」から1930年代から'40年代にかけて学校適応と人格形成を内容とする「訓育(生徒指導)」に変化し、学級担任の職務規程も整備された。'50年代から'60年代の前半は、開放的な雰囲気と中等教育進学者の急増を背景として、学級担任の新しい実践が試みられ、わが国の「学級活動」の時間に類似した「学級の時間」の試みが始められ、その後普及していった。ペレストロイカ期から1990年代においては、それまでの社会主義イデオロギーとともに訓育も軽視されたが、2000年頃から、訓育の再評価とともに学級担任の職務の重要性が再評価されるようになり、急速に法整備が進められている。2007年以降開始された新しい教育課程基準の改定の中で、教科外領域が初等段階で週10時間というボリュームで基準カリキュラム化され、総合的な学力形成とともに訓育活動推進の場とされている。すなわち、学級経営を含めた学校全体の組織的な訓育体制の経営が目ざされることになるといえるだろう。 日本に関する補充調査では、長野県における学級担任配置の特性を明らかにすることができた。
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