各務原市立蘇原第二小学校の児童の内、保護者からの研究同意を得られた1〜6年生約600人について、学習の基礎力としての集中持続力、注意振分力および近時記憶力を高めるための高次脳機能トレーニング(以下、脳トレ)の教材として、研究代表者が開発した視覚・聴覚(写真と言葉)記憶課題を適用した効果を検証した。2008年6月から2009年1月の間に10回の脳トレを行って回毎の変化を検証した上、10回の脳トレの前後に研究代表者が成人対象にいわゆる脳年齢を計測するために開発した同一標準課題を適用して、脳トレ前後の変化を調べた。なお、脳トレ教材はすべて新たに制作した異なる記憶課題を用いた。本研究は、オリジナル課題による高次脳機能(知能)の成長発達の調査およびトレーニング効果の検証を目標としたが、特筆するべきは、1年生から6年生まで全く同じ課題にチャレンジしたデータを得られていることである。 見た写真、聴いた言葉の近時記憶力の評価点(視覚聴覚各60問、計120点満点)の学年平均の比較により、視覚・聴覚入力を記憶として保持する能力のトレーニング効果は、低学年で大きいことがわかった。特に3年生で顕著であり、学年平均点において、ともすれば4〜6年生を凌駕するほどであった。また、個々人の脳トレ毎の得点の変動を追跡した結果、低学年ほど変動の幅が大きいことが明らかになった。以上の結果から、1〜3年生の間に、本研究で用いた視覚・聴覚記憶課題のような教材による脳トレを実施することが、知能の基盤として重要と考えられる高次脳機能ネットワークの機能(集中持続力、注意振分力、記憶力)を発達させ、かつ高いレベルで継続的にその能力を維持させるために肝要であることが示唆された。
|