昨年度より裏声を引き出すという観点で、子どものイメージを喚起しやすい歌詞、裏声を出しやすいメロディーや音域などについて考慮した教材の開発を進めてきたが、今年度も引き続き20曲程度の歌唱教材を試作した。その開発した教材を用い、ピアノ等の個人レッスン指導を行なっている研究協力者に、幼児への指導を実施してもらった。また指導の過程で、教材の改良も随時行なった。 教材の試行で得られた音声データや映像記録、指導の記録等を分析し、教材の有効性と指導法の評価を行なった。今年度は、とくに音声データの機器を用いた音声分析を実施し、声のピッチや、裏声・表声の換声点等のデータを詳細に分析した。その結果、教材のどういった特徴が裏声を引き出す上で有効であったかなど、その効果と問題点が明確となった。 また、静岡大学教育学部附属幼稚園においても教材の試行を継続し、教材開発に当たった研究代表者と研究協力者が園に出向き活動を行なった。活動の様子は、ビデオ映像とフィールドノートに記録し、現在、子どもの声はもちろんのこと、感性や想像力、表現力などに、どのような影響を与えたかなど、多角的に検証を行なっている。その結果をふまえながら、今後、子どもの声の能力を引き出すためのカリキュラム・モデルの構築を目指していく。 また保育者自身に教材を活用してもらうために、曲の演奏サンプルを録音した音源を制作し、指導のための手引きを作成中である。平成22年度においては、さらに全国の幼稚園・保育所等で指導を試みる予定である。
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