今年度の研究としては大きく二つ挙げることができる。第一には、教師の自主的なサークルである広島授業づくり研究会の研究合宿に参加し、シンポジウム的にライフヒストリー的なアプローチによる教師の力量形成インタビューを行ったことである。従来の実践研究に個人の実践史(ライフヒストリー)を加味したものであり、実践者としての教師のこれからの展望を示すものになった。 もう一つは、ライフヒストリーアプローチにおける観(授業観、学習者観等の観が集積されたもの)の形成と教育技術の獲得の関係を理論的な仮説を論文としてまとめ、また日本語教師における力量形成についてモノグラフをまとめたことである。観の形成においては実践経験および振り返りが極めて重要であることが明らかになった。またモノグラフにおいては、教師の力量形成においては、とくに技術そのものの独自の発展も大切な要因だが、観との関係において技術のある部分は捨てられ、あるいは発展しということがあることが明らかになった。理論的な成果、モノグラフについては、論文としてまとめ、また質的な研究としてライフヒストリーアプローチを大きく授業論の研究史の中で位置付ける著作をまとめることができた。
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