研究初年度に当たる2008年度は、資料による「ゆさぶり」と教師の発問による「ゆさぶり」に焦点を当てて研究を進めた。琉球大学附属小学校では道徳研究主任の先生の協力を得て、1年間を通してこの2つのゆさぶりを中核とする授業をおこなってもらい、授業後には授業検討会を設けて当日の授業をともに振り返った。浦添市立港川小学校でも授業研究会を6回おこなってもらい、本研究で開発している授業モデルを実践家の立場から検討してもらった。その結果、以下のような成果と課題が明らかとなった。 1.2つの「ゆさぶり」を用いた授業では、子どもたちの発言が活発になり、与えられた課題に真剣に取り組む姿勢が見られた。ときには教師が予想もしなかった鋭い指摘を子どもたちがおこない、我々をしばしば驚かせた。これはこれまでの授業研究でも見られたことであり、今回もこの点で本研究の有用性が再度確認された。 2.資料でゆさぶることの意義については学校教師に概ね理解された。しかし、発問によって子どもたちをゆさぶることは、学校教師にとって容易におこなえる実践ではなかった。学校教師と検討した結果、この困難性の原因として次のことが浮かび上がった。 (1)子どもたちの思考や授業展開を意識してゆさぶることが重要である。そうでなければ、子どもの発言の単なる否定や授業の混乱に終わってしまう。 (2)そのためには、教師がその授業で子どもたちに何を考えさせたいのかという授業のねらいをこれまで以上に明確に授業に臨む必要がある。ゆさぶりは常に子どもたちの思考を深め、授業のねらいを意識しておこなわれなければならない。ただし、このことは教師の望む答えを子どもたちに言わせるためおこなうこととは根本的に異なる。
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