研究2年目となる平成21年度はおもに「討議」に焦点化して研究をおこなった。正しい答えを教える道徳授業ではなく、子どもたちに主体的に考えさせる道徳授業を展開しようとするとき、子どもたちの考えを無条件に肯定せずに彼らの意見を自分たちで吟味するためには「討議」(もっとも妥当な根拠を探る話し合い)が不可欠である。 しかし同時に、こうした討議の実施が容易でないことも改めて確認された。子どもたちは自分の意見を述べることができても、異なる意見をその根拠に基づいて吟味し、意見を収斂させていくという活動は難しい。この点についてはさらに授業の展開・教師の発問・教材等の工夫が必要である。 また、理論研究に関して言えば、道徳的価値の社会構成主義的な性格や課謬主義の観点から研究を進めているがまだ成果を公表する段階にはいたっていない。これは研究の最終年度に当たる平成22年度も継続して研究をおこない、研究論文として成果をまとめて発表したいと考えている。 ただし、「討議」を意識した道徳授業を琉球大学附属小学校、浦添市立港川小学校で実際に複数回実践してもらい、授業後に検討会を開催したが、そのときの授業者ならびに学校現場の先生方は困難さを自覚しつつも手ごたえをつかまれていたようだった。また、こうした実践モデル開発研究の成果は公立小学校の校内研修や免許更新講習会で紹介しており、受講者に好評であった。
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