へき地・小規模校における特別支援教育体制の構築に関して、北海道根室管内の小中学校及び関係機関の実態調査を行い、若年層の教員が多いこと、通常学級、特別支援学級の授業の質的な向上が必要であること、専門家がいないこと、関係機関が少なく、かつ少ない関係機関と学校との連携に課題があることなどが浮かび上がってきた。 しかし、標津町の小学校を起点とした幼稚園・保育園、中学、高校や地域の関係機関を巻き込んでいく戦略的な取り組み、網走管内津別町の小学校の特別支援学級と地域との連携による授業づくりなど、へき地だからこそ可能な支援体制の試みが行われており、また、山口県下関市豊浦地区の保護者による実践共同体の新たな形成など、専門機関に過度に依存しない特別支援教育体制構築の兆しが各地で取り組まれるようになってきた。また、それに関わるキーパーソンの役割の明確化、養成・支援に専門家がどのようにかかわるのかなども明らかになってきた。へき地においては、ソーシャル・キャピタルが強く、そのような地域に学校教員が上手に入り込み、地域の歴史・伝統・文化を踏まえながら、すでにある資源の再デザイン化と新たな実践共同体の創出による特別支援教育体制の構築という方法論が有効であることが明らかになった。 また、日本LD学会において「社会資源の少ない地域における特別支援教育推進の課題と展望(3)」と題した自主シンポジウムを行い、下関市豊浦地区、津別町、標津町の取り組みの実践報告を行った。また、へき地における特別支援教育体制構築の方法として、エンゲストロームの活動理論に基づく方法の有効性について、及びインクルージョンを目指した地域作りについて協議を行った。
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