研究概要 |
研究代表者は、過去5年間21年度まで、述べ160名のLD、ADHD、自閉症スペクトラム児に対して次のような課題を行いその発達的変換を追跡してきた。調査項目は、児童生徒に対しては、RAN(一文字・有意味語・無意味語・イラスト)、文章読み、音韻操作課題(モーラ削除・モーラ抽出)、虫食い数字読み、数字読み、発話速度、Reyの図形の模写・直後再生・遅延再生、ローマ字読み書き(4年以上)、中学生以上の場合は、英語の読み書きについても調査を行った。担任にはLDI(LDI-R)、PRSの記入を依頼した。保護者には加藤(2006)の「日本のディスレクシア」の特徴について回答を求めた。中学進学に当たって対象者の多くが特別支援学級へ在籍したため、英語と日本語の読みおよび音韻操作の関連については分析に十分なサンプル数が得られなかった。そこで、読み書き困難を示す大学生1事例の英語日本語の読み速度を健常大学生と比較し,英語読みと日本語読みの関連についての補助的資料とした。本年度は、過去5年間のこれらのデータの集計と分析を行った。1)RAN(一文字・有意味語・無意味語・イラスト)の発達的変換、2)RAN課題と音韻操作課題の関連性、3)文章読み課題とRANおよび音韻操作課題の関連性。また、読み障害についての二重欠陥仮説にもとづいて次のような側面から分析を行った。4)無意味語読みと有意味語読みの発達的変化の差異、5)両者のディスクレパンシー、6)無意味語読みと音韻操作課題(モーラ削除・モーラ抽出)の関連、7)日本語読み速度と英語読み速度の関連。複数年これらの調査に参加した被験者を対象に、8)一文字・有意味語・無意味語の読む速度の個別の発達的変化。以上のことを通して、読み書き困難を抱える事例の認知的特徴とその発達的変化を検討した。
|