研究概要 |
本研究は知的障害児を含む発達障害児に対する自立活動のカリキュラム開発を目的とする実践研究である。この目的を達成するため,平成21年度は研究初年度の研究成果を踏まえて,自立活動の内容の体系化を行うことを中心に進めた。特に,自閉症児その他の発達障害児に対するムーブメント教育の方法と,運動面で配慮が必要な知的障害児に対する自立活動の教育方法および教材を体系的に整理し,まとめた。その結果,ムーブメント教育では,社会的・情緒的な発達過程をふまえて,アタッチメント理論や情動的コミュニケーションの理論をベースに,教師と子どもの関係性を発展させていくことが重要であることが示唆された。このとき,教師は子どもの言葉に注目するのではなく,表情やしぐさなど,身体的な変化を通して理解することが重要であると明らかになった。また,体の動きがぎこちなく,運動面で配慮が必要な知的障害児に対しては,理学療法やリハビリテーションの分野で築き上げられてきたアセスメント方法をそのまま利用するのではなく,運動に興味をもつような遊びや課題を提示して,子どもの運動面の実態を把握することが重要であることが示唆された。自立活動の授業展開では,運動面の困難の克服・軽減が教師の意図であったとしても,子どもが課題に集中し,取り組めるように興味を引くようなゲーム等を考え,実践することが重要であり,教材開発が重要であることが明らかになった。次年度は,こうした研究の知見を言語障害を伴う知的障害児への自立活動にも応用し,あらゆる障害特性に応じて自立活動を実践できるように体系化するとともに,知的障害児を担当する教師が学級で自立活動を容易に実践することができるように,「自立活動実践マニュアル」を作成していきたい。
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