研究概要 |
平成21年度は、入院中の小児がん患児(3歳~15歳)における骨髄穿刺や腰椎穿刺などの侵襲的な医療処置に際する唾液アミラーゼ活性値ならびに心拍数の変動、および両者の関連性について、患児の年齢要因を考慮して検討した。 本研究の結果、以下の3点が明らかになった。1.全ての対象者のサンプルでは唾液アミラーゼ活性値と心拍数の間に関連性は認められなかった。心拍数の基礎値が高い年少児(6歳未満)のサンプルを除外すると両者の間に有意な正の相関関係が認められた。2.年少児群と年長児群(6歳以上)で比較したところ、心拍数は全てのphaseにおいて年少児群のほうが有意に高値であった。唾液アミラーゼ活性値については、いずれのphaseについても年少児群と年長児群の間に有意な差異はみられなかった。3.急性ストレス時の唾液アミラーゼ活性値は心拍数と相関し,交感神経系の活動高進と密接に関連していた。4.唾液アミラーゼ活性値は対象者の年齢を問わずストレス指標として用いることができ、小児のストレス評価において有用な指標となる可能性がある。 本研究で得られた結果は、理解力や言語表現能力の面で主観的評価に限界のある小児のストレス状態を評価する上での有用性が期待でき、その応用は病弱児のQOLの向上に資するものと考えられた。ストレス反応の程度はストレッサーの強さ,年齢,性別,性格特性,ストレッサーに対する認知的評価や対処能力等によっても異なる可能性がおるため,今後はこうした要因も含めつつ、病弱児の日常生活のさまざまな場面における検討を重ねていく必要がある。
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