20年度には、学習・生活場面における効果的な言語・コミュニケーションのためのスキルを検討し、発達段階を査定するのに効果的な評価項目を抽出した。続く21年度は、語彙・文法・語操作領域の研究知見のまとめから、幼児期以降の言語能力の発達について整理を行った。また、算数、理科、社会科などで用いられる抽象度の高い語彙を教科書からの抽出も行い、これらの検討から明らかになった最終的な評価の観点を体系化し、具体的な評価課題の作成を行った(一次版)。決定した評価軸は、「言語指示の理解と表出」「話しことばによる文章の理解」「文章の読解」「語彙知識」「状況説明」「文の構成」「問題解決など」「音韻意識」の8領域である。さらに、これらのアセスメント課題を小学校1~4年生計60名に適用し、データを収集した。その結果に基づき、いくつかの課題について修正を行い、二次版を作成した。さらに、本スケールを小学校1~4年生60人に適用し、結果の全体傾向と、個人プロフィールの多様性について検討した。いずれの領域においても、学年が上がるとともに平均スコアの上昇が見られた。絵画語い発達検査(PVT-R)の語彙年齢と下位検査スコアとの相関を検討したところ、語彙年齢は「総合スコア」、「語彙知識領域スコア」、「慣用句・心的語彙等スコア」と特に高い相関が得られ、発達過程を評価するアセスメント法として妥当性があることが示唆された。支援ニーズのある児童の抽出を意図したスクリーニング的な評価であるため、下位検査によっては粗点の上限を得る児童もいるが、下位検査領域ごとのスコアをグラフ化することにより、支援領域を明らかできることが示された。個人プロフィールのばらつきは、特に1~3年生で大きく、本スケールは特にこの学年範囲での適用が期待される。
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