研究概要 |
乳幼児期における言語発達アセスメント法が求められているものの、確立した評価法の乏しい現状を受け、申請者らは6歳までの幼児を対象とする評価法を開発した(大伴ら,2005)。一方、学齢期以降も、通常学級に在籍する児童のなかで特別な教育的ニーズを有する者の多くが言語・コミュニケーションに課題をもっている。本研究では、学齢期における学習・学校生活の基盤となる言語スキルを整理・体系化し、これらを評価する課題を考案して学齢児用の評価法を開発することを第一の目的とした。また、試作版を全国各地の児童に適用して標準化を行なうとともに、言語・コミュニケーションプロフィールの類型化を行なうことを第二の目的とした。20年度には、学習・生活場面における効果的な言語・コミュニケーションのためのスキルを検討し、発達段階を査定するのに効果的な評価項目を抽出した。21年度は、60名の児童への適用を経て最終的な評価の観点を体系化し、評価課題の確定版を作成した。22年度は、東京都多摩地区、北海道札幌市、長野県長野市の小学校1~4年生計247名(男児125名、女児122名)を対象として確定版の標準化を行った。本課題は多様な課題から構成されるが、因子分析などによる検討から、以下の7つの言語領域に整理されることが示された:「文・文章の聴覚的理解」「語彙」「慣用句・心的語彙・皮肉」「文表現」「柔軟性」「音韻意識」「文章音読・理解」。また、これらの7領域の標準化スコアから、各児童の言語・コミュニケーションのプロフィール化が可能となることが明らかになった。絵画語い発達検査(PVT-R)を44名に対し行ったところ、音読のスコアを除き、すべての課題成績と有意な相関が見出された。特に「語彙知識」の成績と最も高い相関(r=0.749)が得られたことは、開発された評価法の妥当性を示している。本評価法は、特に通級による指導を受ける児童の評価しと指導目標設定に有用であると考えられる。
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