2009年の12月に視察したバイエルン州シュバインフェルトのライヘルショフ環境センターの取り組みと2010年9月に視察した環境教育先進校の東京都立羽村特別支援学校の取り組み等から、日・独の知的障害児の環境教育についての5つの諸課題を導き出し論文としてまとめた。第一は、知的障害児の環境教育を展開する上での農園芸と結んだ取り組みの可能性の課題、第二は、地域との連携の課題、第三は、学校における専門的教員の発掘とコア集団の確立の課題、第四は、知的障害児の環境教育の授業検討の課題、第五は、知的障害児の環境教育が高等部中心になされている問題である。この知的障害児の環境教育の課題の整理は、これまでの諸研究では十分になされておらず、本研究において、ドイツと比較することによって一定の整理を行うことができた。また、比較的軽度の知的障害生徒が在籍している全国の知的障害高等特別支援学校(分校・分教室を除く)における環境教育の実施状況に関する質問紙調査結果を検討することにより、知的障害高等特別支援学校における環境教育の現状と課題を明らかにすることができた。環境教育の実施の状況は、環境教育を実施している学校と実施の意向はあるが本年度は実施していない学校を合わせ、38校中26校(68.4%)であり、知的障害高等特別支援学校においては、環境教育の取り組みに向けた検討や実践が進められていることがわかる。ただ、本調査で指摘された「生徒の多様な実態に合わせる重要性・困難さ」は、特別支援教育特有の課題であり、通常の学校における環境教育とは異なり、特別支援教育独自の検討が必要であるといえる。今後、障害の実態や認知特性等に多様性がみられる特別支援学校において、環境教育を推進するためには、領域・教科および領域教科を合わせた指導の特質をとらえ直し、環境教育との関連と位置づけを整理する必要があろう。今後、本研究で得られた成果を生かし、知的障害児の環境教育のプログラム化、授業化を進めていきたい。
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