本研究は、視覚障害児・者に対する地図を学習するにあたっての効率的な指導プログラムを検討・作成することが目的である。この指導プログラムはこれまでの視覚障害教育にはみられなかったもので、その内容は、ある環境を確実に既知化してそれを地図化する、さらにこの既知化と地図化をセットとして、他の環境においてもに実施することによって地図を学習させ、その概念化を図るというもので、既知地図化法と称している。全国の盲学校・特別支援学校等における歩行指導はまだまだ十分とは言い難い現状があるが、この指導プログラムはその充実に寄与するものと考えられ、さらに視覚障害者に対するリハビリテーションにおいても有益であろうと判断される。 研究の推進にあたっては、盲学校等の協力を仰ぎ、過去2年間で事例を収集して既知地図化法の有効性を検証した。その研究協力者(教員)は次の6盲学校の7名であった。北海道札幌盲学校(1名)、奈良県立盲学校(1名)、大阪府立視覚支援学校(2名)、大阪市立視覚特別支援学校(2名)、兵庫県立視覚特別支援学校(1名)。本年度は、研究協力者とともに既知地図化法の指導プログラムの作成を本格化させた。その作成には、夏に実施した全国の盲学校教員を対象としたシンポジウム(約40名参加)からも意義のある意見・情報を得た。作成された指導プログラムは、以下の3つのステップからなっている。ステップ1は、既知地図化法の対象となる具体的な環境を系統だったファミリアリゼーション(未知環境の系統的な既知化)とその後の歩行による確実な既知化である。ステップ2は、既知化された具体的な環境を用いて地図の意味、作成法、読み取りといった地図化の指導である。ステップ3は、般化と能力の定着を目指した他の環境でのステップ1及び2の応用的な実施である。なお、本研究の成果である既知地図化法指導プログラムは、研究関連報告書として作成し、全国の盲学校、視覚障害リハビリテーション施設、関連大学・研究所等に郵送した。
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