本研究の目的は、第61回国連総会において採択された障害者権利条約における教育条項(第24条)を中心として、その成立過程及び実施準備過程を、各国の特別ニーズ教育の到達状況及び進捗状況を踏まえ、比較教育学的に検討することである。 1.障害者権利条約教育条項の項目の内容解釈として、障害者権利条約の教育条項の成立過程における議論の整理をおこない、成文化に関わる各国の対応について分析した。なお、特別ニーズ教育に関しては、OECD、UNESCO等の国際機関の動向や統計を検討した。や比較教育学的検討を分析して、概要と類型を明らかにする。 2.教育条項の中でもっとも中核に位置付くのが「インクルーシブ教育」の概念である。その状況把握として、アメリカ合衆国における「インクルーシブ教育」の到達状況の把握として、バーモント州のランドマーク大学、ニューヨーク州のシラキュース大学を拠点に、「インクルーシブ」教育の実情調査を行った。特に、ランドマーク大学は学習障害やADHDに特化した大学であり、「合理的配慮」のみならず、自己権利擁護への支援が特徴であった。また、シラキュースでは、インクルージョンの多様な形態があるが、教育条件の整備をともなって行われている点が特に重要であると考えられた。 3.障害者権利条約の日本での批准に関して、国内的な法制度の整備・改善が求められているが、特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議の中間まとめの検討を行うと共に、日本での権利条約批准のための条件整備のための視点として、アメリカ・イギリスオーストラリアでの学校教育における「合理的配慮」「合理的調整」の具体化を把握し、分析を行っている。
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