本研究の目的は、第61回国連総会において採択された障害者権利条約における教育条項(第24条)を中心として、その成立過程及び実施過程を、各国の特別ニーズ教育の到達状況及び進捗状況を踏まえ、比較教育学的に検討することである。 1.障害者権利条約の重要な原理となっている「差別の禁止」に関して、その概念と類型を明らかにし、日本社会医学会総会シンポジュームにおいて報告した。また、特に教育に関して特別ニーズ教育学会において教育講演を行い、その内容理解を深めた。 2.障害者権利条約教育条項の項目の内容解釈として、障害者権利条約の教育条項の成立過程における議論の整理をおこない、成文化に関わる各国の対応について分析を深めた。また、権利条約の批准を行ったオーストラリアの場合を中心に「教育に関する障害基準」「合理的調整(reasonable adjustment)を検討し、特殊教育学会において発表を行った。 3.教育条項の具体化という点から、早期対応(early intervention)が重要となるが、その状況把握として、オーストラリアのクイーンズランド州のグリフィス大学の自閉症早期療育センター、Autism Queenslandを訪問し、自閉症への対応に関して資料収集を行うと共に、意見交換を行った。 4.障害者権利条約の日本での批准に関して、国内的な法制度の整備・改善が求められているが、特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議や障がい者制度改革推進改革会議での議論の状況を検討した。日本での権利条約批准の視点として、差別の禁止の観点から学校教育における「合理的配慮」の具体化、通級指導教室の実践などを把握し、分析を行った。
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