該の研究期間内に障害者権利条約を批准した国はおおよそ100ヵ国となった。障害者権利条約の第24条は、教育の条項であり、障害のある子どもを含めたすべての子どものためのインクルーシブ教育を発展させることを求めている。本研究では、権利条約の批准を念頭において、アメリカ、イギリスやオーストラリアにおける教育システム検討した。 当アメリカは、障害者権利条約を批准してはいないが、障害のあるアメリカ人法の下で、インクルージョンの多様な形態を教育条件の整備をともなって実施しており、また、高等教育等においては「合理的配慮」と同時に、「自己権利擁護」への支援が特徴として捉えられた。イギリスは、障害者差別禁止法のもとで特別ニーズ教育を進展させてきたが、2009年に障害者権利条約を批准したが、一般教育システムに特別教育を含むと解釈し、特別学校の位置づけをおこなっている点が特徴であった。オーストラリアも、イギリス同様障害者差別禁止法を制定していたが、障害者権利条約の批准にあたって、障害者差別禁止法を改定するとともに、2005年に「教育に関する障害基準」を制定し、「合理的調整(reasonable adjustment)」をインクルーシブ教育の中で具体化していた。 日本での権利条約批准の視点として、差別の禁止の観点から学校教育における「合理的配慮」の具体化、特別ニーズ教育の実践などが重要視されよう。また、障害者権利条約の「非差別」の理解との関係で、特別学校や特別教育のシステムをどのように位置づけるのかという課題が残された。
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