1、聾学校の人工内耳装用児の在籍および手話利用状況;聾学校での在籍率は、乳幼児で80%、幼稚部で91%、小学部で84%、中学部で52%であり、手話の使用は、幼稚部で7割以上、小学部で9割近くであった。うち、人工内耳を意識した特別な教育プログラムが実施されている学校は数校であった。 2、手話環境下における人工内耳装用児の課題を整理する;(1)小学生の場合、聴覚を通して、相手の話の修復技法を習得することで、相手との会話から必要な情報を取り込む手だてを修得させる会話トレーニングを体系的に行うことにより、主体的に情報取得をする心構えを構築できる。(2)乳幼児期の場合は、コミュニケーションの成立を詳細に分析した結果、通常の聴覚活用は、コミュニケーションが成立する経過の中で開発されてくると考えられたので、音韻情報習得前にコミュニケーションの成立を先行した取り組みを行なってきた。その取り組みの経過観察の中で、人工内耳装用乳幼児の聴覚発達が、興味関心を誘う楽しさを基盤としたコミュニケーション活動を基盤として拡がっていくことが推察された。そこで、両親の希望に添って、a)早期に指文字等で音韻を意識させた幼児の場合、音と結合して表出語彙は増大していくが、意味概念の広がりが十分でなかった。b)音韻そのものよりは、韻律情報を主体として聴覚を活用した幼児の場合、非常なおしゃべりで、構音は不明瞭だが、内容的には、2年間でほぼ年齢相応の言語力を習得してきた。教育プログラムの立案の際の検討課題となるであろう。 3、人工内耳装用児の聴覚情報処理を進めるための教育プログラムの構築に向けて;装用初期のコミュニケーションの成立が大前提であり、手話環境下にあっても、聴覚を活用するためには、聴覚活用を動機付ける為の教育プログラムを個人ベースで実施する必要性が認められた。今後、全体のプログラムの構築に向けて、さらに検討を要する。
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