手話環境下にある人工内耳装用児においては、乳幼児期の場合は、コミュニケーションの成立が聴覚利用と著しく関わっていた。手指を含むコミュニケーションの成立が優位な場合、人工内耳装用乳幼児の聴覚発達は、興味関心を誘う楽しさを基本とした相互コミュニケーション活動を基盤として拡がっていくことが観察された。(1)初期の母子コミュニケーションがいずれかのモードで確立できている場合には、その後の経過は以下のようであった。a)早期に指文字等で音韻を意識させた幼児の場合、音と結合して表出語彙は増大していくが、意味概念の広がりが十分でなかった。b)音韻そのものよりは、韻律情報を主体として聴覚を活用した幼児の場合、音声コミュニケーションがより活発化し、構音も明瞭になってきた。3年間でほぼ年齢相応の言語力に到達できる場合もあることがわかった。(2)これに対し、初期の母子コミュニケーションが十分に成立できない場合には、手指のコミュニケーションの導入を先行し成立をはかったものの、音声言語の発達は促されにくかった。長期的な介入により音声コミュニケーションが可能となっても日本語の操作に課題を残し、文字での確認により日本語の形態を再認知させる言語指導プログラムが有用となった。こうしたことから、聴覚活用を動機づける教育プログラムをろう学校を含む介入機関全体で統合的、有機的に実施する必要性が認められた。今後、機関間の連携を中心とした教育プログラムの実施に向けて検討を要する。
|