<重症者に対する研究>:26歳の重症者男性1名を対象にコミュニケーション機器の使用を学習する試みを月に1〜2回、協力施設で行った。対象者が自作スイッチを押しても即応しないなどストレスになっていたため、ピエゾスイッチ(PPS)のセンサーを頸部に装着し、首を横に動かしてスイッチが入力できるように変更した。その結果、3分割された呈示画面でヘルパーらの写真をストレスなく選択できるようになった。この様子を録画して観察し、評価した。また、ストレスを反映するアミラーゼの数値は試行後に数値が上昇する傾向が認められた。応答性のよいスイッチの活用がストレスを少なくし、適正なコミュニケーションの獲得につながる可能性が認められた。 <自閉症児に対する研究>:インフルエンザ脳症に3歳の時に罹り、都立特別支援学校小学部4年に在籍する重度知的障害女児を対象に'08年5月から'09年2月まで、T大学で原則週1回、約40分間、VOCA(トーキングシンボル)の使用して他者に対する要求行動を目的に応用行動分析の手続きで個別指導した。指導開始時は目についた物を次々と舐めたり、無作為に叩くことが多く、玩具などを機能的に扱うことができず、手に持つ時間も短かった。また、非常に多動で一所に留まる時間も極端に短い。発声やサインはなかった。児の手が届きやすいジャケットの左胸の部分にVOCAを縫い付け、指導者は児から指導者へ手を伸ばすなどの行動がみられた場合、VOCAを叩くことができた場合などに、それぞれ好きな遊びを行った。その結果、舐める、叩くなど問題行動が減少し、求められる行動が明らかに増加した。このように、VOCAを用いて因果関係のわかり易い玩具を用いた段階を踏んだ指導で、VOCAを用いて他者に対して自分の要求を伝える行動が形成されたものと推察された。
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