<重症者に対する研究>:(1)27歳の重症者1名にパソコン上のコミュニケーションソフトTACで操作を月に1~2回、協力施設で習得するための指導を行った。前年度に作動が有効であると確認できたピエゾスイッチ(PPS)を対象者の頸部に装着し、首の動きでスイッチ入力できるようにした。そして、TACに挿入した日常生活場面の写真をオートカキャンで選択することを学習し、その精度を確認した。その結果、ほぼ100%の正確に選択でき、今年度、自宅での使用の準備が整った。また、即応性の高いスイッチに変更したことで、アミラーゼ値も安定し、指導場面で大きなストレスを得ないことが確認できた。少例ではあるが、心拍のR-R間隔のスペクトルからもその傾向がうかがえた。(2)重症心身障害児1名を対象に、VOCAを用いた要求行動の形成を行った。本人の意思を明確に捉えるために、「ほしい」玩具と「ほしくない」玩具を対呈示した。その結果、「ほしい」玩具提示時にVOCAに左手を伸ばす行動が多く生起し、「ほしくない」玩具提示時には生起しにくくなった。このことから、強化価の異なるものの提示には要求の機能を明確にする効果があると考えられた。一方で、VOCAを押す行動を獲得するには至らなかった。その要因にVOCAの選定が関係していると考えられる。 <自閉症児に対する研究>:知的障害特別支援学校に通う、文字は読めるが言語表出の乏しい中学2年生の自閉症児1名に対し、トーキングシンボルを活用して要求することを学習させた。プレイルームで、トランポリン、ままごと、お絵かきの要求に対してVOCAで要求表出し、許可を得てから行動するように指導した。当初の直接行動が減り、トーキングシンボルを押して要求することが増えた。その後、トーキングシンボルの要求後に対応した文字カードも導入して、そのカードを読むことで言語化して要求するようにした。
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