<重症者に対する研究>:(1)28歳の重症者1名(M:MA;4歳)に精度の高いノートパソコンに移植したコミュニケーションソフトTACを首の動きでスイッチ入力するピェゾスイッチ(PPS)で操作する取り組みを月に1回、協力施設で行った。 また、TACに新たに休日の余暇活動の場所の写真を挿入し、指導の汎化を確認した。その結果、ヘルパー名、余暇活動の場所、自宅の生活用具はほぼ100%の正確に選択できたが、「次へ」「戻る」「終了」などの操作にはプロンプトが必要であった。取り組み前後のアミラーゼ値は、取り組み後に減少する傾向が見られ、それが、心拍のR-R間隔のスペクトルから自律神経系の活性化がうかがえた。(2)16歳7ヵ月のダウン症の重症児1名(F:DQ;3)を対象に、原則週1回VOCAおよび棒スイッチを用いて要求行動の形成を図った。遊びたい玩具への要求を、棒スイッチを引くことで他者に伝える行動を標的行動とした。その結果、自発行動は少ないものの誘導後にはスイッチを引っ張る行動が100%みられるようになった。しかし、それが、触ったものに引っ張る反射様の行動と玩具への要求意図かは不明であった。 <自閉症児に対する研究>:文字は読めるが言語表出の乏しい中学3年生の自閉症児1名(M:VA;4歳)に対し、月1回プレイルームで、VOCA(トーキングシンボル・トーキングブリックス)を使用して遊びの要求をして許可を得てから遊ぶことを学習させた。その結果、トランホ°リンでは遂行率は100%、ままごとが70%で、ベースラインに比べてVOCAを使用して許可を求める行動が増えた。また、家庭にも「道に飛び出さない」と発声するVOCAを導入し、外出前にVOCAを押す取り組みを行った。当初は、親のプロンプトが必要であったが、次第に自発的に押すようになった。しかし、この操作は反射的行動が形成されたもので、それが道路に飛び出さない意識的な行動に必ずしも結びついていないことが推察された。 いずれの取り組みも、VOCAを家庭の日常生活へ十分に導入にするには至っておらず、今後もこれらの取り組みを継続するとともに、VOCAが日常生活に活用されにくい理由を、特別支援学校などにアンケート調査する予定である
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