通常学級で教科の特殊領域・方法で学習困難を示しても理科で才能を発揮する、中学生の特別な学習ニーズを識別して、学習を個性化する方策を探ることを目標とした。そのために、本年度は、前年度に終了した小学校における科研費研究で開発された才能行動を見出すための質問紙をベースに、中学校以降の生徒と教師が、各々自己の才能行動を評定する質問紙を開発して、その特徴を調べた。まず一つは、中学生・高校生が、主要5教科について、得意・苦手な学習行動を自己評定するためのチェックリストを開発した。そして学力が異なる大学生と高校生を対象として、予備調査を行った。修正を繰り返した質問紙によって、被験者群と観点による評価の高低の異なる傾向が見られた。もう一つは、中学校教員志望の理系大学生を対象に、自己の科学才能評定の調査を行った。その結果、4つの因子が抽出された。すなわち、(1)科学知識・理解、(2)理科に関する身の周りの具体物、(3)理科における独創性、(4)論理的な表現力、の各々に関する有能性であった。クラスター分析により、全ての因子得点が高い「熟達者型」、(2)の得点が高い「具体物型」、(1)と(4)の得点が高い「屁理屈型」の科学才能スタイルが見出された。続いて、地方のコンテスト受賞者を指導した理科教員について、インタビュー調査を行った結果、理科研究作品で優れた能力を示す児童生徒の特徴として、(1)発想力、(2)豊かな感性、(3)明確な課題意識、(4)こだわり、(5)文章構成力、などが明らかとなった。生徒の自己評定質問紙調査によって、得意と苦手の差の大きい者を発見して、得意・苦手のパターンを見出し、学習の個性化に資する見通しが付いた。
|