虐待防止の施策対象が児童相談所を軸に展開しているが乳児や低年齢幼児への虐待死への対応が手遅れになる。この現状に歯止めをかける方策の開発を目指した。日本の乳児幼児対象施策のうち母子保健事業に着目し、従来から研究代表者が母子保健事業で関わってきた二本松市との間で協力が成立した。保健師が中心になって行っているこの事業を虐待の防止や虐待の可能性のある保護者の早期発見につなげる方法として、妊娠した母が役場を訪れる母子手帳交付時に着目し、この機会に質問票記入を依頼し、虐待の予兆を検出する事を目指した。数回の現場スタッフとの協議の末、母とその夫(パートナー)についても養育意欲や配偶者との関係などについて別途に質問することで、予兆の検出がより可能になると判断し、妊婦用、パートナー用2種類の質問票を作成した。 質問票作成の討論は現場の保健師及び歯科衛生士、事務、子育て支援室、管理職の最大18名で数回行った。この間質問票の各項目の趣旨説明のために毎回虐待に関する文献紹介や資料提供を行い学習会形式で進めた。その結果、構成メンバーは乳幼児虐待についての理解を深め、また各質問項目についてインターネットを使って全員から提案を集中して貰い、それを素案として研究代表者が原案をまとめ、それをもとに全体で再吟味する方法をとった。それが実用性を期待できる質問票の完成に大きく貢献し、職員全体の虐待予防と子育て支援への意識の高まりを醸成した。 完成した母子手帳交付時質問票は妊婦用38問、パートナー用15問となり、回収を開始している。この質問項目を土台に、同様質問や出産した子どもに関する質問を新たに加え、2か月児、1歳児、1歳6か月健診時、3歳児健診時の計5回の質問票作成を今後進めていく。こうした継続的なコホート調査を通して虐待予知の項目を検索していく予定である
|