乳幼児への虐待急増に対し、児相への虐待通告が学校、保育所を軸に進展している。しかし厚労省調査虐待死亡の年齢分布は、0歳で全死亡の50%、4歳までに80%を占め、低年齢側への著しい偏りがある。このことから出生後早期に虐待予兆を発見し、予防策を講じる必要性がある。内閣府調査で0~2歳の85%、6歳以下の50%が未就園で、保育所・幼稚園での乳幼児虐待把握は、その過半が漏れる。本邦では自治体母子保健事業が悉皆受診を前提に施行されており、これと連動して母とパートナーに質問紙調査を行い、これを用いて虐待の予兆の早期に発見するシステムを開発している。質問票の配付は2009年1月で、2010年8月までに回収できた資料を検討した。この間、手帳交付時質問票配付総数764組、このうち母からは700名(回収率91.6%)、パートナーからは426名(回収率55.8%)であった。こんにちは赤ちゃん時の配付は490組で、母からは211名(回収率43.1%)、パートナーからは209名(回収率42.7%)であった。手帳交付時とこんにちは赤ちゃん時の両質問票が揃ったのは母が131名、パートナーが113名となりこれを解析した。手帳交付時の質問で「しつけのためなら子どもを叩いてよい」に、そう思う、あるいはどちらかというとそう思うと肯定した回答は129名中72名(55.8%)であったが、出産後の「こんにちは赤ちゃん」訪問時では56名(43.4%)へと減少傾向にあった。「気軽にあいさつや立ち話が出来る人がいますか」では出産後に気軽な相手が減少する傾向が見られ、この傾向は「子育ての不安を話す育児仲間がいますか」でも仲間が少ない側に移動しており出産後に孤立感を深めるようであった。しつけという名の暴力容認割合が育児の進展で変化する経過をさらに解析し虐待予防に資する解析を進める予定である。
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