これまでに、吃音のある子どもが自己の吃音に翻弄されず、吃音と上手く折り合っていくこと、さらには、吃音のある子どもの自己肯定感を支えていくための一つの視点として、子どもが自らの吃音や自己について理解していくこと、学んでいくことの重要性が指摘されている。本研究では、吃音のある子どもが個々の状況、発達段階等に応じて、吃音及び自己について、どんなことをどのように学んでいけばよいのか、その指標、内容を明らかにし、支援プログラムを構築することを目的としている。1年目の本年度は、文献による吃音臨床、吃音理解、自己意識等に関する知見の収集、言語障害通級指導教室担当教員、成人吃音者、吃音のある子どもの保護者からの直接的な資料収集を行った。文献研究からは、吃音のある子どもの自己肯定や吃音受容に関与する事項、他者による吃音の評価が本人に与える影響、吃音があることの日常生活への影響に関する意識、当事者の吃音に対する考え方、等が整理できた。言語障害通級指導教室担当教員からの資料収集においては、吃音理解に関する指導内容や方法として、吃音に関する知識(症状の種類、吃音の波、等)、自己の吃音の振り返り(自分の吃音のタイプ、症状が出やすい条件、等)、学習の方法(ワークシート、様々な話し方の実践、等)等、いくつかの要素が整理できた。成人吃音者や保護者からの資料収集においては、日常行っている様々な工夫、学齢期に知っておきたかったこと、現在の吃音に対する思いやそれに影響を与えた事項、等について整理できた。次年度は知見の収集・蓄積を継続し、それを基にした支援プログラム(試案)の作成を計画しているところである。
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