研究概要 |
加法的問題の研究においては,指定された形の和で表せない自然数の密度がしばしば問題となるが,円周法でそのような密度評価を与える際に,1940年前後にDavenportが発表したDiminishing range methodが有効な場面があることを,川田とBristo1大学のWooley氏が共同で発見した.この方法は多くの加法的問題に応用できるが,とくに6個,7個,8個のそれぞれの個数の素数の3乗の和で表せない自然数の密度に対する新しい評価を与えたほか,3乗数及び4乗数のWaring問題に付随する例外集合の密度評価,および,べき乗数の和としての表現の数に対して予想されている漸近式に関わる例外集合の密度評価に対しても,これまで知られていた評価を上回る結果を得た.これらの成果は,2編の論文として今年度発表している,また,押切は接触構造をもつ3次元多様体においてS.ChemとR.Hamiltonによって導入された「許容計量」を拡張し,任意の正定数kに対して「k-許容計量」を定義し,その基本的な性質を調べた.これにより,とくにリッチ曲率の値と全測地的であること,およびレーブベクトル場がキリングベクトル場となることが同値であることを示した. さらに,川田はGottingen大学のBrudern氏と共同で,これまで6乗以上の場合にしか有効な応用のなかったHeath-Brownの方法を5乗数を含むWaring問題に対して応用することに成功し,また,Beatty列中の素数の分布をDiophantus近似の問題ととらえるという着想によって把握することができることを示した.これらの成果については,論文を投稿中である.
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