研究概要 |
概均質ベクトル空間の理論はさまざまな他分野とも関連して発展してきた.研究代表者の雪江は主に概均質ベクトル空間のゼータ関数の周辺の分野で成果をあげてきた.ゼータ関数には大域理論と局所理論があり,平成20年度は雪江はおもに局所理論について研究した.具体的には一般変数の2次形式の空間の場合に密度定理を証明した.これは早坂との共同研究である.2次形式に対し直交群が定義できるが,2次形式の軌道から直交群の基礎体上の同型類の集合への写像は単射になる.この直交群に対して非正規玉河数というものを定義できる.これはおおざっぱにいうと,基本領域の体積である.早坂との共著論文において,この非正規玉河数の密度を決定したが,この仕事で用いたJordan分解の概念の拡張について現在コンピューターを使った計算などを行って研究中である.2次形式の場合のJordan分解は不変式論的には,共変モースstratificationの不安定点の帰納的な構造を「裏側に考えて」素数を法として順に考えたものとみなせる.この考え方にもとづき,例えば$G=GL(2)\times GL(2)\times GL(2)$,$V=k^2\otimes k^2\otimes k^2$や$G=GL(2)$,$V=Sym^3 k^2$などのいくつかの簡単な場合には,既に考察が終わっている.また,それを使って局所ゼータ関数の一様評価を得ることも確認済みである.これをもっと大きい概均質ベクトル空間の場合,例えば$G=GL(3)\times GL(3)\times GL(2)$,$V=M(3)\otimes k^2$に行うことが現在進行していることである.
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