研究概要 |
虚数乗法をもつ楕円曲線の直積と同種であるアーベル多様体を特異という。今年度は2次元の場合、即ち有理数体上で定義された特異アーベル曲面のトーションについての研究を行った。3より大きな素数の位数をもつトーションは通常は特異アーベル曲面上には存在せず、存在する場合位数は5と7に限ること、また5, 7のトーションを持つ曲面を特徴づけることが出来ることを示した。この素数は対応する虚2次体の判別式の約数になっている。この結果からさらに高次元の有理数体上で定義された特異アーベル多様体のトーションについて同様の問題を考察する手がかりが得られた。 代数体上の楕円曲線の楕円曲線のトーションから、ある数の倍数を類数とする代数体を構成する問題を考察した。 (1) kを代数体とし、k上の楕円曲線で奇素数の位数のトーションをもつものを考える。このときkの2次拡大で類数が位数で割り切れるものが無限に(密度正で)構成できることを示した。 (2) 有理数体上で定義された楕円曲線で位数m(=3, 5 7)の有理トーションをもつとする。このとき3以上の奇数dに対し、類数がmで割り切れるd次の代数体を無限に構成できることを示した。
|