本年度は主に以下のような研究を行った。 (1)有理数体上のアーベル曲面 前年度は有理数体上定義されたCM型アーベル曲面について、どのような素数位数の有理点が可能かということを調べた。本年度はそのような曲面のトーション群を完全に決定するという問題を考察した。また、より高次元のアーベル多様体についても対応する研究を行った。虚数乗法を持たない楕円曲線から作られる有理数体上のアーベル曲面にも同様の問題が考えられるが、まだ部分的な結果しか得られていない。これは今後の興味ある研究課題である。 (2)素数1の倍数を類数とする代数体の構成 このような代数体はその次数をもつ不分岐拡大体を作成する必要がある。本研究では楕円曲線とその同種写像を利用してより一般的に構成した。この方法は同種写像からある方程式を導き、その解の作る代数体が求める不分岐拡大に対応するというものである。このことから無限に多くの1の倍数になる類数をもつ代数体を構成することが可能になる。このような拡大の不分岐性の判定には対応する楕円曲線の有理点の還元が非特異であることが鍵になる。1=5のとき、上記拡大体はBrumerの5次多項式による2面体群をもつ代数体と関係している。その関連を具体的に記述することが出来た。 (3)楕円曲線の整数点と独立元 特別なタイプの有理数体上の楕円曲線のMordell-Weil群を考察し、そのランクが1や2になる条件を決定した。また、具体的に整数点のすべての決定や独立元の構成などを行った。
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