研究概要 |
離散系列表現に付随する保型形式の次元公式に応用するために基礎として,離散系列表現の球関数,放物的部分群に付随する羃零軌道と概均質ベクトル空間の構造について研究した.特に保型形式の基礎のために著書「入門;保型形式とユニタリ表現」,及び保型形式を表現論的に扱うための基礎として著書「局所コンパクト群と Banach 環の表現論序説」の執筆を行った.第一著書は編集委員による査読が終了し,最終的な手直しの段階であり,第二著書は岩波書店より出版予定である.必ずしも複素構造をもたない対称領域を Jordan 三重系で表示することにより,非正則離散系列表現の球関数の明示的な公式を求めることが来年度以降の課題である.特に正則離散系列の球関数を全実な部分領域に制限してできる球関数が実際に離散系列の球関数になる場合を特定したい.その他の研究活動として 1)2011年7月22日~24日:千葉大学にて第19回整数論サマースクール準備の勉強会を子なった. 2)2011年9月5日~9日:第19回整数論サマースクール講師として出席し,重さ半整数のSiegel モジュラー形式と Jacobi 形式の関係について講演した.又,様々な保型形式の持ち上げについて討論した. 3)2011年9月20日~22日:東京大学数理科学研究科にて関口次郎教授還暦記念研究集会に出席し離散系列表現の球関数について研究,討論した. 4)2011年1月16日~17日:数理解析研究所の研究集会「保型形式と保型L-関数の研究」に出席し討論研究連絡をおこなった. 5)2012年2月12日~17日:横浜国立大学にてp-進群の表現論の研究集会に講師として出席し, Supercupidal 表現について有益な情報を得た.
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今後の研究の推進方策 |
二つの著作は一段落したので,それに割いていた時間を研究に振り向けることができる.又,正則離散系列表現に付随する球関数をお制限してできる球関数が,非正則な離散系列の球関数となるか否かは上に述べたように若干の困難があるが,抽象的な意味で球関数になることは明らかなので,その Fourier 変換を具体的に計算し,その非零集合を決定することは意味がある.又,同様の問題を進群で考えることも興味深いと思う.予備的にp-進一般線形群のdepth zeroの既約 supercuspidal 表現の球関数について計算した結果,p-進軍の場合には実 Lie 群とは全く違う状況が生じている可能性があることが判った(報告論文は現在執筆中).計算は有限体上の簡約可能線形群の cuspidal 表現の情報を必要とするが,その分野最近急速に発展してきたので,一般線形群以外の群について計算することも可能ではないかと思う.
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