アフィン・リー環gに付随する量子群(アフィン量子群)U_{q}(g)のレベル・ゼロ(有限次元)基本表現のテンソル積表現の結晶基底は、Lakshmibai-Seshadripathと呼ばれる組合せ論的対象を用いて具体的に記述できる。即ち、このテンソル積表現の"最高ウエイト"であるレベル・ゼロ優整形式をλとするとき、型がλのLakshmibai-Seshadripath達をgのnullrootをmoduloとして同一視する事で得られる集合B(λ)_{cl}には、Littelmannのrootoperatorによって自然なU_{q}(g)-クリスタルの構造が入り、それが上のテンソル積加群の結晶基底の実現を与えている。 上で述べた、型がλのLakshmibai-Seshadripathは、gのワイル群であるアフィン・ワイル群W(によるλの軌道Wλ)上の(通常のBruhatorderとは明らかに異なる)ある種の半順序により記述される。しかし、それらをnullrootをmoduloとして同一視する事で得られる集合B(λ)」cl}の内在的な記述を与える"言葉"を、我々はこれまで見つけられずにいた。 しかし、最近我々は、アフィン・リー環gの自然な有限次元(単純)部分リー環のワイル群に対して定義されるquantumBruhatgraphを用いて、我々が探していたB(λ)_{cl}の内在的な記述を与える事ができた。このquantumBruhatgraphは、上記の有限次元単純リー環に付随する旗多様体G/Bの量子同変コホモロジー環の積構造を記述するChevalleyの公式を記述する為に導入されたものである。 旗多様体G/Bの通常の同変コホモロジー環の積構造は、有限次元単純リー環の既約最高ウエイト表現(の結晶基底)の言葉で記述される事が分かっている。その一方で、旗多様体G/Bの量子同変コホモロジー環の積構造を記述する表現論は、今まで知られていなかった。この様な状況における上記の発見は、量子(同変)コホモロジーの理論への応用が大いに期待されるものである。
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