研究代表者越谷重夫は、今回の研究課題に関連して、今年度ブルエ予想に関する以下のような結果を得た。有限群の表現論、特にモジュラー表現論に関して、特に重要なのが、「ブロック」である。ブルエ予想とは、「考えているブロックの不足群が可換群(アーベル群)である場合には、元のブロックと、より小さい部分群、具体的には考えているブロックの不足群の正規化群、のブロックであるブラウアー対応と呼ばれるものの間に、とても重要な深い関係、類似があるのではないだろうか、という予想である。具体的には、この2つのブロックの間に、導来同値があるのではないか?という予想、問題である。今回、研究代表者は、連携研究者の一人である功刀直子(東京理科大学講師)とイギリスの研究者M.ホロウエーらと共に、ブルエ予想をとく場合に役立つ道具となり得る定理、および、ブルエ予想の少し一般化されたルキエによる予想に関して、いくつかの結果を得た。これらの結果は、スイスの学術雑誌Archiv der Mathematik(Birkhaeuser)に掲載された。その後、ドイツ・アーヘンの研究者J.ミュラーとの共同研究で、大変重要な散在型単純群の一つである原田群(原田-ノートン群)に対して、このブルエ予想を完全に解くことができた。これは、国際的学術雑誌Journal of Algebraにほぼ掲載が確定している。 また、2009年9月に、スペイン・バレンシア大学から、G.ナバロオルテガ(バレンシア大学教授)を招へいし、ブルエ予想に関する共同研究を開始した。また、2009年12月には、ドイツ・アーヘン大学、イギリス・アバディーン大学などの研究集会セミナーにおいて、今回の研究で得られたブルエ予想に関する結果の発表、講演を行った。少し前後するが、2009年9月と11には、京都大学数理学研究所の研究集会で、それぞれ1度ずつの研究発表を行った。また、2010年3月末には、慶応大学で開かれた日本数学会春季学会で、企画特別講演において、今回の研究で得られたブルエ予想に関しての結果を発表した。
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