W代数は、豊富な例を有する興味深い研究対象として、過去20年以上にわたり数理物理および数学において活発に研究されてきた。本研究では、格子頂点作用素代数の内部に現れるW代数に注目し、格子頂点作用素代数あるいは双対格子から定義される既約加群を用いて、W代数の既約表現を構成すること、およびその既約表現を詳しく調べることにより、W代数の性質を理解することを目標とした。特に、基本的なW代数のひとつであるパラフェルミオン頂点作用素代数を中心に研究を進めた。パラフェルミオン頂点作用素代数は、レベルk、階数1のA型アフィン頂点作用素代数におけるハイゼシベルグ代数のコミュタンとして定義され、ある種の格子頂点作用素代数の部分代数として実現される。平成21年度までの研究では、kが小さい場合にパラフェルミオン頂点作用素代数の既約表現を分類するとともに、パラフェルミオン頂点作用素代数の性質についてある程度の知見を得た。平成22年度では、パラフェルミオン頂点作用素代数とレベルk、階数1のA型アフィン頂点作用素代数との関係について荒川知幸、Chgngying Dong、Ching Hung Lamと共同で研究を進め、一定の条件の下で両者の関係を解明することができた。そこで用いた議論は、レベルkが任意の正の整数の場合に対して適用できることに注意する。この成果は、中国科学院理論物理研究所で開催された特別プログラムにおいて報告された(2010年8月3日)。また、関連する結果を日本数学会秋季総合分科会において発表した(2010年9月22日)。さらに、パラフェルミオン頂点作用素代数のC_2有限性についても考察し、特異ベクトルとの関係に注目した内容を台湾のNational Center for Theoretical Sciencesで報告した(2010年9月3日)。
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