研究概要 |
本研究の目的は、分岐条件を付けたガロアの逆問題を考察し、その応用として「代数体kの最大不分岐p拡大のガロア群Г(p)の構造解析」を行うことである。平成22年度の実施計画に記した計画の主たるものは、「不分岐G拡大の存在に関する研究」「(2,2)拡大の類体塔に関する研究」であった。 不分岐G拡大に関しては、前年度の終わに「任意のp群Gに対して、有理数体上の初等アーベルp拡大kとその不分岐拡大K/kで、ガロア群G(K/k)がGと同型となるものが存在する」という結果を得た。今年度はこの結果を論文にまとめOsaka J.Math.に投稿し掲載が決定した。さらに、基礎体kをどれくらい小さく取れるかという問題について考察したが、この問題を解決するためには「代数体の埋め込み問題」の理論をもう少し整備し、さらには「p群の中心降下列の構造」について考察する必要があることがわかった。方向性はほぼわかったので、これは次年度の課題である。 また、(2,2)拡大の類体塔に関しては、3-類体塔に関する吉田英司氏の論文(Acta Arith. 2003)からイデアルの単項化問題と密接に関係していることがわかった。単項化の議論とp群の数値計算を踏まえた構造解析を行い、代数体の埋め込み問題の理論を適用することで吉田氏の結果を一般化できると考えている。これも次年度の課題である。
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